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心理学用語のなかに、「防衛機制」というものがあります。
ちょっと難しそうな感じがしますが、心の問題を考える上で、とても重要な言葉です。 このコラムでは、その「防衛機制」について、身近な例を使って、とってもわかりやすくお話ししていきたいと思います。 「防衛機制」とは、自分自身の心を、さまざまな方法で守ることです。 たとえば、急に危機的な状況に陥ったとき、誰でも考えがまとまりにくくなったり、何も手に着かなくなったりします。 もちろん、自分の能力や他人の援助で、なんとか踏ん張って、危機的状況を乗り越えられれば問題ないのですが、いつもうまくいくとは限りません。 そんなときに、心が分裂したり、崩壊したりすることを防ぐ心のメカニズムが、「防衛機制」です。 「防衛機制」には、いろいろなものがありますが、どれも心の病気と密接に関係しています。しかし、「防衛機制」があるからといって、すぐに病気だと考えるのは間違いです。 「防衛機制」は、どんな状況に陥っても、なんとか意識の連続性を保つための、一時的な「心の安全装置」だと考えていいと思います。 ただし、この安全装置は、心の自由を奪いますし、ずっと作動し続けると負荷がかかって、安全が保てなくなってしまいます。 そんな場合に、心の病気が発生します。 それでは、「防衛機制」について、1つずつ、お話を始めましょう。 自分自身の中で、自分自身が受け入れられない考え方や感情、記憶を否定し、なかったこととしたり、無理矢理忘れようしたりすることです(この前のコラム、「神経症と不安障害について」で、詳しく説明しています。ご参照ください)。 何かと理由をつけて、自分自身の正当性を確保したり、ほかのものに責任転嫁をしたりすることです。 たとえば仕事で失敗したとき、こんな難しい仕事を押しつけた上司が悪いとか、無能な部下が悪いなどと言って、自分の失敗を認めないことなどです。 自分自身が受け入れたくない現実(失敗や欠点)を、受け入れられる形に無理矢理変形しようとすると考えてもいいでしょう。疲れていたり、精神的に余裕のない時には、誰にでも見られる行動です。 ただし、「合理化」を繰り返すような場合、抑圧された「自己嫌悪」や「自己不信」などがあり、「葛藤」に苦しんでいると考えられます。そのせいで、受け入れたくない現実を、無理矢理変形しようとするわけですね。 他人が持っている優れた能力や実績を、自分のものであるかのようにみなしたり、感じたりすることです。優れている他人と同じような行動をすることも含まれます。 スポーツ選手や有名アーティストの熱狂的なファンなどが典型例です。 恐怖の対象となっている親や幽霊のまねをする場合には、特に「攻撃者との同一視」と言います。 自分が恐怖の対象(攻撃者)と同じになることによって、攻撃されないようになるという心理的メカニズムが働いています。子供によく見られます。 優れた人物や攻撃者と同じだという満足感、安定感で、「抑圧」と「葛藤」による不安や恐怖から目をそらそうとしているわけですね。 たとえば、親が「学歴に対する劣等感」を持っている場合、自分の子供が高学歴を持つことで解消しようとするケースがあります。 高学歴を持った子供と自分自身を「同一視」することで、「劣等感」から逃れようとするわけです(「学歴に対する劣等感」については、この次のコラム「劣等感とコンプレックスの違いって?」をご参照ください)。 このようなケースでは、子供に猛勉強を強制するようになります。 子供自身の将来のためではなく、あくまで親の劣等感の解消のためなので、子供も反感を持ちやすく、いろいろな問題が生じやすくなってきます。 自分自身が「抑圧」している考え方や感情を、ほかの人が持っているように感じてしまうことです。 たとえば、会社の上司をひどく嫌っていたとしましょう。 そんな状態は、とても疲れますし、精神的にも、よくありません。そこで、「抑圧」する事になります。 しかし、上司とは、いつも顔を合わせるので、「抑圧」していた嫌悪感は、絶えず刺激されることになります。つまり、「強い葛藤状態」に置かれるわけです。 そして、「神経症」のメカニズムが働いて、原因不明の不安に悩まされるようになります。この状態は、とても苦しいものです。 そこで、本当は自分の心のなかにある「嫌悪感」を、相手の心のなかにあると思いこもうとします。つまり、自分が相手を嫌っているのではなく、相手が自分を嫌っていると思いこもうとするわけです。これが「投影」です。 この心の働きは、無意識に行われるので、自分自身は気づきません。そして、ことあるごとに、「私は上司から嫌われている」と感じるようになるわけです。 (人に対する嫌悪や苦手意識につきましては、当サイトのメインコンテンツの1つ「サイストリー」の第2章 5.親への憎しみで詳しく解説しています。ぜひご覧ください。) 「抑圧」した考えや感情と正反対のことをする「防衛機制」です。 先ほどの上司に対する嫌悪の例で説明してみましょう。 今度は、抑圧した嫌悪感が刺激され、「強い葛藤状態」に置かれたとき、その嫌悪感をより強く否定する方向へ心理的メカニズムが働きます。つまり、自分自身は、その上司を慕っている、尊敬していると思いこもうとするわけです。 こんな場合、神経症的な不安から逃れるのが目的ですから、上司への慕い方や尊敬の仕方が、不自然な形で現れます。 たとえば、ひどくていねいな態度で接したり、不条理に満ちた命令でも、喜んで引き受けたりします。ほかの人に対しても、上司のすばらしさを必要以上に強調します。 特に、上司に対する非難や中傷には敏感です。自分自身が「抑圧」している嫌悪感を刺激されてしまうからです。そんな場合、上司に対する非難や中傷を、徹底的に否定するようになります。 このように「反動形成」は、不自然な形で現れる場合が多く、その思考も行動も強迫的になりがちです。 「葛藤」を引き起こすような状況から逃げ出すことで、不安や緊張、恐怖をなくし、自分自身を守ろうとすることです。 たとえば、先ほどの上司のに対する嫌悪の場合には、上司と顔を合わせないようにしたり、思い切って仕事を変えたりすることです。 現実とは違う空想や白日夢の世界に浸ったり、病気になって苦しい現実から逃げ出すことも、「逃避」の一種です。 実際に不安や恐怖、怒りを感じる対象ではなく、代理となるものに、その不安や恐怖、怒りを感じたり、ぶつけたりすることです。 たとえば、親に対する怒りを「抑圧」している場合、親と似た人に怒りを感じたりします。上司に対する「怒り」を、部下や子供に対して発散する、いわゆる「八つ当たり」も、「置き換え」の典型です。 嫁と姑の関係がうまくいかない原因の1つとして、この「置き換え」が考えられます。 嫁の場合には、自分の母親に対する「抑圧」した怒りや不満を、姑に対して感じてしまうわけですね。姑の方も、子供に対する「抑圧」した怒りや不満を、嫁に対して感じてしまうということもあります。 (嫁と姑の関係につきましても、当サイトのメインコンテンツの1つ「サイストリー」の第2章 5.親への憎しみで詳しく解説しています。ぜひご覧ください。) たとえば、勉強ができないという劣等感を、スポーツをがんばって、ほかの人より優れることで補おうとするようなことです。 かなり一般的なもので、うまくいった場合、その人にプラスになることが多いと考えられます。しかし、あくまで劣等感を補償するための行為なので、挫折しやすいということもあります。 また、「強い葛藤」があって、その不安や恐怖から逃れるための「補償」行為の場合、どうしても強迫的になり、不自然なまでに熱中したり、ほかのことをまったく無視したりします。 そうなってしまった場合を、「過補償」または「過剰補償」といいます。 現実の社会で認められない欲求や衝動を、芸術やスポーツといった誰にでも認められる高次の価値を実現することで、発散します。 とても望ましい形の「防衛機制」のように思えますが、その本人が乗り越えなければならない苦痛は、計り知れないものがあります。 「昇華」は、簡単に実現するものではなく、挫折した場合、病的な状況に陥りやすいと言えるでしょう。 結局、成功したごく一部の人を除けば、ほかの「防衛機制」のほうへ流れていくと考えていいと思います。 |
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